ガスハイドレートは、莫大な量の天然ガスを結晶中に閉じ込めて、地球上の海底や湖底、永久凍土中に眠っています。そのエネルギー総量は石油・天然ガスにも匹敵すると考えられています。また、温室効果ガスであるメタンを地球表層に大量に蓄えているため、地球環境問題にも深く関わる物質です。海底・湖底の天然ガスハイドレートに関する研究を進めていて、北海道周辺海域(オホーツク海、日本海、太平洋)やバイカル湖などの海底・湖底堆積物を採取して、天然ガスハイドレートの産状を調べています。また一方では、天然ガスハイドレートの生成過程を明らかにするため、実験室内で様々な種類のガスから人工的にガスハイドレート結晶を生成し、その生成・分解過程や結晶の物理化学的性質についても調べています。
海底・湖底下に存在する天然ガスハイドレートを採取すること自体、大変な作業です。長年にわたる国際共同研究で培われた技術と経験によって、北見工業大学は近年、網走沖・十勝沖、日高沖で天然試料の採取に成功しています。
日本では「メタンハイドレート」という言葉で知られていますが、実際の海底表層の天然ガスハイドレートにはエタンやプロパン、硫化水素などが含まれます。試料を実験室に持ち帰り、ガス分析結果からガスの起源に関する情報を知ることができます。
積雪の白さは雪氷圏におけるアルベド(反射率)を決定し、地球の気候を左右する一要素と言っても過言ではありません。積雪の白さに直接的に関わる物理量として、積雪のSSAが雪氷研究者から注目されています。メタンを扱う雪氷系研究室だからこそ開発・改良できたメタン吸着式の可搬型SSA測定装置は、専門分野では積雪SSAを測定する標準装置として利用されています。
この装置はガスハイドレート研究にも応用されていて、氷表面にメタンハイドレートや窒素ハイドレートなどが生成/分解する際に、結晶表面にミクロな凹凸が生じてSSAが変化する様子などが観察されています。
八久保 晶弘Akihiro Hachikubo
社会環境系 教授