高入力光下での光ファイバ伝送路の信頼性に関する研究を行っています。情報化社会の益々の発展に伴い光伝送容量の爆発的な増加が今後も予想され、それに伴い光ファイバ伝送路内のパワーも増大し、ファイバヒューズと呼ばれる光ファイバの恒久的破壊をもたらす一種の燃焼現象の発生が懸念されています。ファイバヒューズの基礎的研究とそれに基づいた光通信システムの安全性に関する研究を行っています。
ファイバヒューズは、高入力光下での光ファイバの局所的加熱をきっかけとして5千度を超える高温のプラズマが発生し、光ファイバを破壊しながら伝搬し続ける現象です。
ファイバヒューズが伝搬した後には、光ファイバ中心部に気泡列が形成されるため、光が伝搬できなくなってしまいます。
各種光ファイバにおけるファイバヒューズの伝搬特性や発生条件の定量的測定を通じて、ファイバヒューズの発生・伝搬メカニズムの解明を進めるとともに、ファイバヒューズ耐性が高く、安全に大容量伝送を実現できる光ファイバならびに光通信システムの検討を進めています。
より安全な光伝送路を実現するため、光パルスを入力光とすることにより、ファイバヒューズ発生を抑圧し、かつ、万が一、発生してもファイバヒューズを伝搬させない技術の確立を目指しています。
ファイバヒューズ伝搬中に入力光をパルス光に切り替えることにより、ファイバヒューズが伝搬を停止し、大きな気泡を残して消滅することがわかりました。
入力光として波長1ミクロン、平均パワー2Wの矩形波パルス光を用い、長さ1.1kmの標準的な単一モードファイバにおいてファイバヒューズの発生および伝搬を抑圧した状態で光パワー伝送を行い、出力光の光電変換により230mWの電力を得ることができました。
黒河 賢二Kenji Kurokawa
情報通信系 教授