現実世界を光情報によって拡張するための研究をハード・ソフト両面から行っています。ガラスはプラスチックなどと比較し、安価で安定した透明材料ですが、逆に微細加工が難しく、微細な構造を形成するには多くのコストが必要です。本研究では、これまでに独自開発してきたガラスへの微細構造転写技術である「電圧プリント法」を応用し、ガラスへ光を屈折や回折により情報表示することができる微細な周期構造を転写形成することを目指しています。
身の回りの色々なところに使われているガラス。身近な多くの場面で利用されているわけは、透明であり、さらにプラスチックに比較して熱や紫外線などに対し安定した安価な材料であるためと言えます。このようなガラスのメリットは、逆にガラスへの細かな加工を困難なものにしていました。
本研究では、電界処理方法を用いることで、ガラスへ微細な周期構造を転写形成する独自の手法を研究してきました。これにより、ホログラムを透明なガラス上に記録・再生することができます。身近なガラスによる現実の拡張を目指し研究しています。
ヘッドマウントディスプレイを用いたXR(VR・MR・ARなど)は、現在もっとも主流の現実拡張方法の一つであると言えます。ヘッドマウントディスプレイはゲームやディスプレイとしての普及が先行していますがXRの本質は人工的な現実感により、ヒトの感覚や体験を拡張することにあります。
本研究では、ヘッドマウントディプレイを用いたXRによる地域活性化を目指したさまざまなソフトウェア開発を行っています。特に、XRは近年盛り上がりを見せているAIと相性が良く、XRとAIを組み合わせることでバーチャルキャラクターとの対話が可能となり、労働力人口低下への対応ができるかもしれません。まだAIはハルシネーションと呼ばれる誤った回答を返してしまうことが知られていますが、本研究では独自のアルゴリズムによりハルシネーションの発生を大幅に低減することに成功しており、地域での実用化を目指しています。
ヘッドマウントディスプレイを用いずに現実を拡張する技術についても研究しています。その一つとして、空中ディスプレイを用いた研究を行っています。空中ディスプレイは、光を複数回の反射を経て空中に結像する技術で、裸眼で空中に浮かぶ像を見ることができます。空中像にインタラクションするためには、多くの場合空中像に手を伸ばしたことをカメラやセンサーで感知し、表示を切り替えます。
本研究では、使用者が空中像を見ている時に発生する脳波によって、表示される空中像へインタラクションする技術の研究を行っています。これはブレインマシンインターフェースと呼ばれる技術を応用したもので、空中像に脳波を誘発する光を重畳しておくことで、使用者がどの空中像を見ているかを識別することに成功しました。使用者の視覚によって空中像を制御できるシステムを目指しています。
酒井 大輔Daisuke Sakai
情報通信系 准教授