ソーセージは、味付けした肉を羊などの腸に詰めて加工されます。しかし天然素材の腸は品質にばらつきがあるため、加工中に破裂が生じ、生産効率を妨げる要因となっています。これまで、腸の皮に前処理を施すことで破裂を低減できることを明らかにしてきました。しかし、腸の改質だけでなく、品質や賞味・消費期限に関する研究が新たに必要です。
多孔質構造を持つ改質腸は、脂質酸化や微生物侵入が容易になる可能性も懸念され、その対策として天然の抗酸化・抗菌物質の添加が必要と考えられます。本研究では、ミカン果皮由来フラボノイドを有効利用することにより、ソーセージ製造における品質保持を向上を目指しています。
ミカン果皮由来フラボノイドは、抗酸化、抗菌、抗ウイルス、抗炎症、抗アレルギー、抗癌などの生理活性を持つ優れた天然食品成分です。しかし、大部分は活用されず廃棄されています。
本研究では、ミカン果皮由来のフラボノイドを有効利用することで、ソーセージの品質保持のみでなく、持続可能な開発目標(SDGs)「飢餓をゼロに」の達成や、新型コロナウイルスに代表される感染症予防にも貢献すると期待されます。
ミカン廃皮の抽出物を異なる濃度で添加した改質豚腸を用いたソーセージのpH分布図の可視化では、抽出物濃度の異なるサンプルのpH違い(a~c)を区別することはできません。しかし、近赤外ハイパースペクトルイメージング(HSI)では、その違い(d~f)を容易に判別できます。
改質豚腸ソーセージのハイパースペクトルイメージング(HSI)による品質診断法を確立することによる賞味期限の適切な評価の実現とハイパースペクトルイメージング(HSI)品質診断法を活用した改質豚腸の商品化を目指しています。
フォン チャオフイFENG CHAOHUI
応用化学系 助教
文部科学省科学技術 卓越研究員理化学研究所 光量子工学研究センターテラヘルツイメージング研究チーム 客員研究員