北見工業大学

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北海道網走沖の海底において表層メタンハイドレートと湧出ガスの撮影と採取に成功(地球環境工学科 山下聡教授)

   北見工業大学「環境・エネルギー研究推進センター」は、北海道網走沖のオホーツク海において、遠隔操作無人探査機(ROV)による潜航調査を行い、海底表層に存在するメタンハイドレートと海底から湧出するガス(メタンプルーム)の撮影と採取に成功しました。


概要

   北見工業大学「環境・エネルギー研究推進センター」は、2017年7月20日から22日にかけて北海道網走沖のオホーツク海において、第一開洋丸(海洋エンジニアリング株式会社)搭載の遠隔操作無人探査機ROV(KAIYO 3000、写真1)による潜航調査を行いました。
   調査では、網走沖の水深550m程度の海山頂部(比高約150m)及び水深750m程度の海底谷の2地点(図1)において、海底湧出ガスの噴出孔をROVで調査しました。
   調査の結果、噴出孔は狭い範囲に多数確認され、多量のガスが噴出している様子(動画1)を撮影することに成功しました。また、湧出ガスを漏斗状の容器で捕集し、漏斗上部に取り付けた圧力容器で湧出ガスを直接回収しました(写真2)。ガス分析を行った結果、回収ガスの成分はほぼ100%がメタンガスであることが分かりました。さらに、噴出孔付近をROVのマニピュレータで掘削したところ、ガスとともにメタンハイドレートの小片が上昇する様子(動画2)も見られ、メタンハイドレートが表層付近から存在していることも確認されました。
   調査地点一帯には、多数のバクテリアマット(写真3)が観察されるとともに、カーボネートの集合体(写真4)も多数確認されました。カーボネート集合体や噴出孔付近には多くのタラバガニ類も観察(動画3)され、また、メタン湧出域で生息するシロウリガイと思われる二枚貝の生体個体も採取されました。


調査地点でのこれまでの調査

   調査地点は、網走から35km程度沖合の2地点(水深550m及び750m程度、図1)です。この地点では、2012年11月に行った北海道大学水産学部附属練習船「おしょろ丸」を利用した共同利用実習において、海底から海面下150m程度まで確認できる巨大なメタンプルームが最初に確認されました。その後、2013年9月には海洋研究開発機構(JAMSTEC)調査船「なつしま」による調査及び、2014年11月に実施した「おしょろ丸」による共同利用実習において、コアラーによりメタンハイドレートを採取している地点です。


意義

   オホーツク海網走沖においては、2011年以降海底表層に存在するメタンハイドレートを対象とした調査を本学では行っています。これまで、海底からガスが湧出するメタンプルームを計量魚群探知機やマルチビーム音響測深機によって200地点以上で観測しています。また、複数地点でメタンハイドレートをコアラーにより採取しており、網走沖は表層型メタンハイドレート研究において、有望な研究フィールドであるとともに、将来の資源化を目指すうえでも有望な地域です。
   今回の調査においては、海底から湧出するガスを直接採取することに成功し、採取ガスの分析を行うことによって、網走沖のメタンハイドレートの生成メカニズムの解明が格段に進むものと言えます。また、目視により海底湧出ガスを観察できたことから、画像データからガス湧出量を評価することによって、メタンハイドレートや湧出ガスの資源量評価にも繋がります。さらに、調査地点ではタラバガニなどの生物群集も確認され、メタンハイドレートやメタンプルームが海洋生態系に及ぼす影響解明にも繋がります。


調査参加学生,教職員

・学生12名: 北見工業大学 学部4年生9名,大学院生3名
・教職員5名: 山下 聡   教授      社会環境工学領域
                    八久保 晶弘 教授      環境・エネルギー研究推進センター
                    小西 正朗  准教授   バイオ環境化学領域
                    坂上 寛敏  助教      マテリアル工学領域
                    仁科 健二  主査      北海道立総合研究機構地質研究所

 
用語説明

1) メタンハイドレート
 水分子で構成されるカゴの中にメタン(天然ガスの主成分)分子が入っている、低温高圧下で安定な結晶固体です。水深350 m程度より深い海底表層堆積物の中に一定濃度以上のメタンが存在すると、メタンハイドレートが生成します。海底付近に存在するものは表層型と呼ばれ、世界各地のメタン湧出域で見つかっています。
2) メタンプルーム
 海底下から供給されるメタンが水(堆積物間隙水および海底直上の海水)に溶けきれないほど高濃度の場合、メタンが無数の気泡となって海底から海水中を上昇する現象です。ガスプルームまたはガスフレアとも呼ばれます。
3) バクテリアマット
 細菌などが繁殖し、マット(敷物)状になったもの。海底の場合、堆積物中から発生した硫化水素ガスを栄養成分として増殖する硫黄酸化細菌などがバクテリアマットを形成することが知られています。
4) カーボネート
 堆積物中のメタンが微生物の働きで分解される際に生じる炭酸と堆積物間隙水中のカルシウムなどから生成する鉱物(炭酸塩)です。

 
問い合わせ先

北見工業大学 総務課 広報担当
Tel:0157-26-9116(直通)
Fax:0157-26-9174
E-Mail:soumu05*desk.kitami-it.ac.jp

※スパムメール対策のため、メールアドレスの「@」を「*」に変えています。
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【図1】 オホーツク海網走沖の調査地点(国土地理院地図に加筆)



【写真1】 調査で使用したROV(KAIYO3000:海洋エンジニアリング(株))



【写真2】 海底から湧出するガスを漏斗に溜め、真空引きした上部の圧力容器のバルブをROVのマ
ニピュレータで開閉することによりガスを採取。漏斗に溜まったガス気泡はハイドレートの被膜に覆
われている。



【写真3】 調査地点に点在するバクテリアマット



【写真4】 カーボネートの塊に密集するタラバガニ類



【動画1】 海底の噴出口から湧出するガス気泡。噴出口付近にはバクテリアマットやカーボネート
がみられる。



【動画2】 メタンハイドレート小片の上昇



【動画3】 ガス湧出口付近のタラバガニ類

[企画総務課 2017/08/02 更新]

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